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執筆者の写真Katsumi USHIYAMA

浜厚真の節足動物~浜厚真Bioblitz2021報告~

更新日:2022年8月30日

大規模な風力発電事業が計画されている北海道 浜厚真.


浜厚真には広大な自然海岸が広がり,砂浜,草原,湿原,池沼,河川,疎林など多様な環境が,たくさんの生きものたちの生息地となっています.こうした自然豊かな海岸線は周辺ではすでに多くが失われており,浜厚真は希少な生きものたちの最後の生息地として非常に重要な場所となっています.また,渡りを行う生物にとっては,浜厚真は北海道と本州をつなぐ移動ルートにあたり,多くの渡り鳥などが集結する場所になっています.大規模な風力発電の建設と稼働は,多くの生きものに直接的,間接的に深刻な影響をもたらすと懸念されています.


そこで,この唯一性が高く,希少な環境が失われる前に,浜厚真の生物相をきちんと記録し,必要な保全策を検討するため,市民科学による生物相一斉調査~浜厚真BioBlitz 2021~が行われました.


浜厚真の節足動物


※追記 2022年8月27日~28日に行われた追加調査の結果,コツブゲンゴロウ、コシマゲンゴロウ、コガムシが新たに確認されました.リストの改訂等は追って行います.(2022.8.30)


2021年7月31日と8月1日にかけて行われた浜厚真BioBlitz 2021で記録された昆虫類およびその他の節足動物は475種となりました。その内、環境省レッドリスト(2020)に記載されている種は18種、北海道レッドリスト(2017)に記載されている種は7種でした。


浜厚真には広大な自然海岸が広がっており、各種環境に適応した多様な昆虫類およびその他の節足動物が確認されました。海岸環境は本来、大潮、津波、砂地の増減など、環境変動の激しい環境であり、そこに生息する節足動物類は、これらの変動に適応しています。海流にのり他所への分散移動を行うことや海上でも長期に生き延びられる海水耐性をもつことなどで、変動の激しい海岸環境に生息し続けてきました。しかし、近年の人為的な自然環境改変は、他所への分散移動の機会を減らし、さらに短期の砂地の増減を引き起こしており、このような急激な環境改変は、多くの海岸性節足動物の生息を危うくしています。海浜や湿地環境は世界的にみても希少かつ失われやすい環境であり、それらの環境が良好な状態で残っている浜厚真は、非常に重要な地域と考えられます。各環境の代表種を下記に示します。


・海浜〜イソコモリグモ、ハマダンゴムシ、シロスジコガネ、オオアバタウミベハネカクシ

・汽水〜キバナガミズギワゴミムシ

・湖沼〜各種トンボ目、オオコオイムシ、マルガタゲンゴロウ

・草原〜各種バッタ目、イネホソミドリカスミカメ、セボシヒラタゴミムシ、マルガタゴミムシ

・湿地〜イノウエチビゴモクムシ、ヒメセボシヒラタゴミムシ、キベリカワベハネカクシ


特筆すべき種としては、カワラハンミョウやゲンゴロウといった、環境省レッドリスト(2020)や北海道レッドリスト(2017)にて、高いカテゴリー区分に記載されている種があげられます。特に、カワラハンミョウは環境省レッドリスト(2020)カテゴリー「絶滅危惧IB類」と、本調査による確認種の中で、カテゴリーが最も高い種です。本種は、河川敷や砂浜海岸に生息しています。道内でも一部の地域にのみ生息しており、近年、確認が難しくなった地域も存在します。浜厚真は多くの個体が生息しており、非常に重要な生息地となっています。


浜厚真の昆虫類およびその他の節足動物リストはこれで完成ではありません。昆虫類およびその他の節足動物は、時期により確認できる種類が大きく変わります。浜厚真BioBlitz 2021は今回の1回しか行われていないため、まだまだ多くの種が確認される可能性があります。追加種などありましたらぜひご連絡ください。


浜厚真Bioblitz2021 昆虫班

大原昌宏(北海道大学総合博物館),堀繁久(北海道博物館),菊地那樹(北海道大学),近藤直人(自然ウォッチングセンター),川内谷亮太(株式会社エコテック),佐藤諒一,島津亮太,田作勇人(東海大学生物学部生物学科),能瀬晴菜(小樽市総合博物館),前田大輔(株式会社環境指標生物),三橋昂貴,脇村涼太郎(東海大学生物学部),山本ひとみ,Alyssa Lee Suzumura(北海道大学総合博物館),Ian Dela Cruz(北海道大学総合博物館)


引用

浜厚真Bioblitz2021 昆虫班浜厚真の節足動物~浜厚真Bioblitz2021報告~.石狩川流域湿地・水辺・海岸ネットワーク.https://www.hokkaidoramsarnetwork.com/post/bioblitz2021-arthropods


※浜厚真の生物相については別途オープンデータサイト等で公開予定ですが,それまでは上記で引用をお願いします.


表1)浜厚真で確認された節足動物






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